🩸 1. 循環器との関係
浮腫は、血管内外の水分バランスが崩れることで起こります。循環器疾患では、このバランスが崩れやすくなります。
● 心不全(右心不全)
- 右心室の拍出不全により静脈圧が上昇し、末梢の毛細血管から水分が漏れ出します。
- 特に下肢・足背の浮腫が顕著。
- 寝たきりの人では仙骨部浮腫として出やすいです。
● 静脈還流障害(下肢静脈瘤、深部静脈血栓症など)
- 静脈弁の逆流や閉塞により、局所的に静脈圧が上がる。
- 一側性または非対称の浮腫が特徴。
● 腎疾患性浮腫との違い
- 心不全や静脈障害は「下肢優位で夕方悪化、朝軽快」が特徴。
- 腎性浮腫は「眼瞼・顔面に朝方出る」。
⚖️ 2. 代謝との関係
代謝性の異常は、血漿膠質浸透圧や毛細血管透過性を変化させ、浮腫を引き起こします。
● 低アルブミン血症(肝硬変、ネフローゼ、栄養不良)
- アルブミンは水を血管内に引き戻す力(膠質浸透圧)を担うため、低下すると水が組織側に漏出。
- ネフローゼでは特に全身性浮腫が顕著。
● 甲状腺機能低下症(粘液水腫)
- グリコサミノグリカンの沈着で組織が水を保持する。
- 典型的には顔面の浮腫・舌の肥大・声のかすれ。
● 糖尿病
- 糖尿病性腎症による低アルブミン血症や腎機能低下が浮腫の背景となる。
- また末梢循環不全も加わる。
👵 3. 加齢との関係
高齢者の浮腫は、複数の軽度な異常が重なって起こることが多いです。
● 血管・心機能の低下
- 加齢により静脈弁機能低下、心拍出量減少。
- 長時間の立位や歩行不足で下肢静脈還流が悪化。
● 筋肉量減少(サルコペニア)
- 下腿筋の“筋ポンプ作用”が低下し、静脈血が滞る。
● 水分代謝の調整機能低下
- 腎臓のナトリウム排泄能力低下や抗利尿ホルモン分泌の変化により、体液バランスが崩れやすい。
● 服薬の影響
- 高齢者では**Ca拮抗薬(アムロジピンなど)**による下肢浮腫も多い。
- NSAIDs、糖質コルチコイド、エストロゲンなども原因となる。
🧩 まとめ:浮腫の3大メカニズムと関連因子
| 原因機序 | 代表疾患・状態 | 主な関連系統 |
|---|---|---|
| 血管内圧上昇 | 心不全・静脈瘤 | 循環器 |
| 膠質浸透圧低下 | ネフローゼ・肝硬変・栄養不良 | 代謝 |
| 毛細血管透過性亢進 | 炎症・アレルギー | 免疫・代謝 |
| リンパ還流障害 | 手術後・悪性腫瘍 | リンパ系 |
| 加齢・筋力低下 | サルコペニア・長時間立位 | 加齢・循環 |
