EPA(エイコサペンタエン酸)製剤の摂取には、特に脂質異常症の改善と心血管疾患のリスク低減において、明確な医学的メリットが示されています。
対費用効果については、治療目的で高純度EPA製剤(医薬品)を使用する場合、特に高リスクの患者さんにおいては、将来的な医療費の削減につながるため高いと考えられています。
医学的メリット 🩺
EPAは、イワシやサバなどの青魚に多く含まれるオメガ3系多価不飽和脂肪酸の一種です。EPA製剤(医薬品および一部のサプリメント)には、主に以下の医学的メリットが期待されています。
1. 血中脂質の改善(特に中性脂肪の低下)
EPAには、肝臓での中性脂肪の合成を抑制し、血液中からの中性脂肪の分解を促進する働きがあります。
- 医薬品として: 高純度のEPA製剤(イコサペント酸エチルなど)は、「高脂血症(特に高トリグリセリド血症)」の治療薬として承認されています。臨床試験では、血中の中性脂肪値を大幅に低下させる効果が確認されています。
 - 一般用医薬品・サプリメントとして: 健康診断などで指摘される「境界領域(やや高め)の中性脂肪値」の改善にも用いられます。
 
2. 心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中など)のリスク低減
EPAには、血中脂質改善作用に加え、以下のような複合的な作用により、動脈硬化の進行を抑え、心血管イベントの発生リスクを低下させる効果が示されています。
- 抗血小板作用: 血液を固まりにくくし、血栓(血の塊)ができるのを防ぎます。
 - 抗炎症作用: 血管壁での慢性的な炎症を抑えます。
 - 血管内皮機能の改善: 血管のしなやかさを保つ働きを助けます。
 
特に、スタチン(コレステロール低下薬)を服用していても中性脂肪が高く、心血管疾患のリスクが高い患者さんにおいて、高純度EPA製剤を追加投与することで、心筋梗塞や脳卒中などの発生率をさらに有意に低下させたという大規模な臨床試験(JELISやREDUCE-ITなど)の結果があります。
3. 末梢血流の改善
医薬品のEPA製剤は、「閉塞性動脈硬化症(ASO)」に伴う手足の潰瘍、痛み、冷感といった症状の改善にも用いられます。これは、EPAの抗血小板作用や血管保護作用により、末梢の血流が改善されるためと考えられています。
健康に対する対費用効果 💸
EPA製剤への投資(費用)が、将来的な健康維持や医療費削減(効果)に見合うかどうかは、その目的や使用する製剤によって異なります。
医薬品として使用する場合(治療・高リスク予防)
対費用効果は高いと評価されるケースが多いです。
- 対象: すでに脂質異常症や閉塞性動脈硬化症と診断された患者さん、または心血管疾患の既往がある・リスクが非常に高い患者さん。
 - 理由: これらの患者さんが高純度EPA製剤を服用することで、心筋梗塞や脳卒中といった重大なイベントを予防できる可能性があります。
 - 投資対効果: イベントが一度起これば、緊急治療、入院、手術、長期のリハビリ、後遺症のケアなど、莫大な医療費と介護費用が発生します。EPA製剤の薬価(投資)によって、これらの高額な医療費(将来のコスト)を回避できる可能性が高まるため、医療経済学的に見て「対費用効果は優れている」と結論付けられる研究が多くあります。
 
サプリメントとして使用する場合(健康維持・一次予防)
対費用効果の評価は、医薬品ほど明確ではありません。
- 対象: 現在は健康だが、将来の生活習慣病を予防したい人、食生活で魚の摂取が不足している人。
 - 理由:
- 二次予防(再発予防): 米国の研究では、心血管疾患の既往がある人(二次予防)がオメガ3(EPA+DHA)サプリメントを摂取することは、対費用効果が高い可能性があると示唆されています。
 - 一次予防(発症予防): リスクが低い健康な人がサプリメントを摂取した場合の費用対効果は、個人の健康状態、食生活、サプリメントの価格や含有量によって大きく変動します。
 
 - 投資対効果: サプリメントは医薬品に比べてEPAの含有量が少ない場合もあり、期待する効果を得るために必要な量を摂取しようとすると、かえってコストがかさむ可能性も指摘されています。まずは食生活(青魚の摂取)を見直すことが、最もコストパフォーマンスの高い方法かもしれません。
 
結論
EPA製剤は、特に脂質異常症の治療や心血管疾患の高リスク群における予防において、医学的メリットと対費用効果が確立されています。
健康維持や予防目的でサプリメントとして摂取する場合は、ご自身の食生活や健康リスクを考慮し、信頼できる品質の製品を選ぶことが重要です。いずれの場合も、摂取を検討する際は、医師や薬剤師にご相談ください。
